生活習慣病という言葉がすっかり定着した。生活習慣病とは
頭油多、
「生活習慣(life style)が要因となって発生する諸疾病を指すための呼称・概念である。ここで生活習慣と言っているのは、食事のとりかた、水分のとりかた、喫煙・非喫煙の習慣、運動をする・しないの習慣などのことである。生活習慣に起因する疾病として糖尿病、高血圧、がん、脳血管疾患、心臓病などが指摘されている」
とウィキペディアは解説している。以前は成人病と呼ばれていたが、聖路加国際病院の日野原重明先生が「生活習慣病」という言葉を使いだして定着したときいている
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生活習慣としてまず思い当たるのが飲酒である。大学一年のお正月、芦屋市の友人宅でご馳走になった。友人のお父さんからビールのサイダー割をすすめられ、うまいと思った。これが私の飲酒歴の起源である。サイダー割から直ぐにストレートのビールになり、日本酒熱燗、ウィスキー水割りと飲酒版図を拡大するのに時間はかからなかった。
会社に就職すると「業務としての」飲酒が待っていた。仕事を覚えるのと並行して、というかむしろ仕事より先行して酒の飲み方を修得していった。日本の会社には交際費という不思議な予算費目があり、これを使ってお客を接待すると、後日そのお客が私たちを接待してくれた。もちろん、お客も交際費を使っている。退職して四年経ったいま思い返すと、なんとも不思議な世界だった。こうして「業務として」酒を飲んでいると、家に帰ってもビール、日本酒、ウィスキーをごく自然に飲んだ。妻が酒好きときているから、家でも毎日宴会状態だった。
こんな塩梅で何時の間にか四十年余りの年月を重ねており、生活習慣病にかかっても仕方がない。聖路加病院で毎年一日ドックを受けていて、数回大腸ポリープを内視鏡切除した以外は糖尿病、高血圧、心臓病などの数値が正常値を保っているの不思議である。しかし人間ドックの診断結果報告書には毎年、
「過剰なアルコールは脂肪肝やアルコール障害の原因となります。アルコールの適量を守るようにしましょう。適量と言われる一日量は日本酒なら一合、ビールなら大瓶一本です」
と特記されている。運動、肥満度、コレステロール、血圧などの十二の健康チェック項目の十一項目は満点に近いのに、「飲酒」だけが大きくマイナス点をつけられている
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ここ数年、アルコール摂取量を減らそうと努力してきた。一日二合でやめようと晩酌を始める。一合目を飲んでいるときは決意が固く目標を達成できそうだ。二合目を呑み切りそうになる頃気持ちよく酔いが回ってきて、気が大きくなる。じゃ、今日はもう一合と一升瓶からお燗器に酒を移していると、いつの間にか四合飲んでいる。晩酌前に日本酒二合を容器に取り分けたり、いろいろな方法を試したが、ことごとく見事に失敗した。脂肪肝やアルコール障害は確実に忍び寄っているのであろう。
今年三月中旬、東京・下北沢の友人が信州一泊旅行に誘ってくれた。道中、佐久市にある友人のお母さんの実家、武重本家酒造に連れて行ってもらった。武重社長が酒蔵を案内してくれた時、日本酒を飲む器はどんなものがいいか尋ねた。
「お猪口はぐい飲みのような大きなものでなく直径三~四センチの小さなものがいいのです。お酒を注ぎ少しずつ分けてゆったり飲むのがいいのです。大きなお猪口だと知らず知らずに量を飲んでしまいます」
そうか、と膝を打った。大きめのお猪口でぐいっと飲んでいた私には目からうろこのような話だ。
信州から帰ってさっそく小さなお猪口を買いに走った。百貨店や陶器店を十軒ほどはしごして、結局横浜中華街の茶器の店で直径四センチ、白磁の上品なお猪口を調達した。それまで使っていたぐい飲みに較べて半分ほどの容量しかない。晩酌のとき、このお猪口で少しずつ、ゆったりとぬる燗を呑んだ。少しずつなめるように飲むと、日本酒の味がより分かるような気がする。一合を飲み切るのになんと一時間かかっている。
「今夜はもうこれでいいかな」
こうして一合晩酌が始まった。
長続きはしないだろうなと思っていた。ところが三日続き、一週間が経過した。記録はどんどん伸びている。友人や家族と外で食事する機会があると、このお猪口をハンカチに包んで持参するようになった。飲食店で会食が始まると、バッグからやおらお猪口を取り出し、一同にことの次第を説明する。外では四合近く飲んでいたのに、二合弱になった。気が付くと一合酒が半年以上続いている。
一日一合の酒を楽しんでいると、翌朝の目覚めがすこぶる気持ちよい。子供の頃から胃が丈夫ではないのだが、最近は胃の具合が爽快でほんとうにありがたい。私の場合、酒量が減ると食事量が減るという相関関係にあり、この半年で体重がニキロ減って六三キロの理想体重になった。
量が減っても酒を愛する気持ちはまったく変わらない。量が減っただけ、より美味しい酒を探し、酒に合った料理を調え、深く味合うような呑み方になっている。六十代中盤を迎え、実によい生活習慣を導入できたように思う。武重酒造社長のアドヴァイスのお蔭である。来年の一日ドック健康チェックで満点を取ろうと頑張っている。